せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
感じたこと、学んだことなどを綴りました。
お役立ち情報とともにお届けします。

 
ティートリー論争 わたしの意見
2006/1/21



 最近ペットにティートリーを使ってはいけないという警告が聞かれるようになっています。ティートリーはペットケア製品にもっともよく配合されている成分のひとつ。今現在も、多くのペットケア製品にはティートリーが使われています。私たち飼い主はこの事態をどう判断したらよいのでしょうか。

 ティートリーとは、オーストラリアやマダガスカルが主産地のフトモモ科の木本。学名はMelaleuca alternifolia(メラレウカ・アルテルニフォリア)。アボリジニの生薬ともいわれるティートリーは、薬品のような鋭い香気と優れた殺菌・消毒作用を持ち、ちょっとした切り傷、擦り傷、急性の皮膚炎や感染症、免疫機能の強化などに効果的です。長年ハワイに在住し最近日本に帰ってきた友人から、アメリカでもティートリーはペットケアに大人気だったと聞きました。衛生面を重視する傾向や自然派志向が強まる中で、できれば人工的な薬剤を使わずにケアしたいという思いと、ティートリーの優れた効能の認知が、この精油を不動の人気にしたのでしょう。それなのに、一転してティートリーは危険といわれるようになったのはなぜでしょう?

 ペットのアロマテラピーはまだ未発展な分野です。研究や症例の報告もなかなか聞かれません。そんな中、2004年の4月に米国のペットアロマセラピスト クリステン・レイ・ベルの著書「愛しのペットアロマセラピー」が翻訳され、その中でティートリー精油使用による中毒事故が報告されました。
彼女は考えられる事故の原因として

   1. 需要を満たすための大量生産による粗悪な品質
    2. 多量摂取や不適切な使い方
    3. あまりにも多くの製品に配合されていること

を挙げています。そして、代替品としてニアウリ、スイート・マジョラム、ラベンサラを奨めています。
原因についてはわたしも大いに頷けますが、必ずしもニアウリなどの精油がティートリーの代替品になるとは考えていません。下の円グラフを見てください。
ティートリー
ニアウリ スイート・マジョラム ラベンサラ
エステル類 脂肪族アルデヒド類 セスキテルペン類 その他
オキサイド類 モノテルペン類 アルコール類
 これは英国のアロマセラピスト ローズマリー・キャディーによるキャディー・プロファイルという方法で、精油に含まれる成分の化学的性質を色で表したものです。ティートリー精油に多く含まれるのは抗菌・浄化作用のあるモノテルペン類(ピネン、テルピネン)と、強い殺菌・消毒作用のあるアルコール類(テルピネオール)がほとんどです。スーッとした刺激のあるオキサイド類(1,8-シネオール)も含まれています。
スイート・マジョラムはティートリーとよく似た色分けですが、鎮静成分の
酢酸リナリルリナロールを含んでおり、神経を刺激・強壮するティートリーとは逆に鎮静作用を示します。血圧を下げて呼吸をゆっくりと整え、ときに眠気をもよおすことさえあります。むしろ同じメラレウカ属のニアウリのほうがティートリーに近い作用を持ちます。しかし化学的組成を見ると、ティートリーとは大きく違っていますね。ラベンサラも殺菌作用に優れ刺激作用がありますが、リラックスさせてくれる効果を併せ持っています。
ニアウリとラベンサラに多く含まれる
1,8-シネオール(オキサイド類)は、優れた去痰作用や抗炎症作用で呼吸器系のトラブルに有効ですが、皮膚刺激となる成分でもあります。良質なテイートリー精油の品質基準は「含有成分のうちテルピネンー4-オール33%以上、1,8-シネオール5%以下」といわれています。ただし、自然のバランスが損なわれていない精油であることが前提となりますが・・・。
ひとつの精油に備わっているいろいろな性質のうち、いくつかの性質を他の精油で代替することはできると思います。しかしこうしてみると、ティートリーそのものを他の精油で代替することは難しいことが見えてきますね。
 我が家の庭のティートリー

 わたしは以前も今も、犬たちのケアにティートリーを活用しています。もちろんせっけんにも配合します。ペットケアにおけるティートリーの実績は確かにあるのですから。ただ、人間と他の動物では代謝に違いがありますので、その点精油の選択や活用には十分注意したいと思います。
注意したい点のひとつめは、精油の
品質です。品質についてはメーカーの姿勢によるところが大きいのですが、消費者が見て判断できる点もありますので、エッセンシャルオイルの選び方と保存を参考になさってください。成分組成を開示しているメーカーもあります。
ふたつめは
濃度についてです。ティートリーは原液を塗布できる数少ない精油のひとつ、切り傷やにきびに原液をちょっと塗っておくといった使い方ができますが、ペットに関しては原液塗布は強すぎるように思います。必ず希釈し、なおかつ低い濃度で用いるべきでしょう。精油はブレンドすることにより、プラス面を高めあったりマイナス面を打ち消しあったりする性質がありますので、他の精油とブレンドするのもよい手だと思います。
3つめは
使い方です。ティートリーは刺激を与える精油です。パワフルで自己主張の強い面を持っており、おのずと活用範囲は限られてきます。わたしは、全身に塗布するマッサージや広範囲の湿布といった活用法は、ダイレクトに効きすぎるように思います。全身浴・半身浴はさらに強すぎるかと・・・。全身に使うなら、洗い流すシャンプーやスプレーといった方法、その他は軟膏やクリーム、オイルに希釈してスポット的に使う方法が向いているでしょう。長期間の連続使用はしないようにしてください。

 どんな精油にもプラスとマイナスの面があります。つまり場合によってはマイナスが前面に現れる可能性もあるということです。ティートリーは今まで万能視されすぎてきたのでしょうね。しかしキケンだと全面否定されるのはあまりにもナンセンス。性質をよく見極めて、ティートリーのパワーを犬に、人に、うまく取り入れたいものです。

愛しのペット・アロマセラピー
クリステンレイ・ベル:著
田邉和子:翻訳 斎藤寛充朗:監訳

さんが出版

犬の他、ネコ、鳥、馬などへのアロマテラピーについても触れられています。症例報告も豊富で、本格的にペットアロマテラピーの理論を学んでいきたい方におすすめです。
カラーグラフでわかる
エッセンシャルオイルの
特性と使い方

ローズマリー・キャディー:著
川口健夫/川口香世子:訳

フレグランスジャーナル社

90種類の精油の成分組成を目で見て理解することができます。精油の性質をビジュアルで覚えるのに役立つ本です。







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