せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
感じたこと、学んだことなどを綴りました。
お役立ち情報とともにお届けします。

 
犬と一緒にせっけん生活
2006/9/20


 顔を洗う、歯をみがく、掃除をする・・・毎日わたしたちは必ず何かを洗っています。洗うために使われるもの、水切れのよい食器洗い洗剤、髪を補修するシャンプー、コンパクトになった洗濯洗剤。思い出してみれば、これらのものもすごいスピードで進化してきたように思います。でも、見回してみてください。台所には台所の、お風呂にはお風呂の、トイレにはトイレの洗剤が何種類も、家のあちこちに置かれてはいませんか?

 洗うモノには以前から少なからず興味がありました。キッチンにはアメリカ製の色鮮やかな食器洗い洗剤、トイレにはミントの香りの消臭洗剤、お風呂にはフローラルの香りのボディソープ・・・洗浄製品が生活を彩るおしゃれな小物としてあらゆる場所に配されていたように思います。もちろんこれらは見た目のきれいさや便利さで選んだ合成品。
 しかし、せっけん作りの始まりはせっけん生活の始まりでもありました。最初は手作りの楽しみがメイン。とっても気持ちのよい使い心地に、すっかり手作りせっけんの虜になったものの、依然として食器洗いや洗濯には合成洗剤を使い続けていましたね。やがて楽しみが「なぜ?どうして?」に変わっていくと、合成洗剤は使えなくなり、洗剤の種類も減っていきました。心地よいからぜひ使ってあげたいと、我が家ではせっけん作り当初から犬もせっけんでシャンプーしていましたが、他の飼い主さんにせっけんをおすすめしようなんてさらさら思っていませんでした。何を使うかはその人の自由であって、ストイックなまでにせっけんにこだわった生活や、ある意味狂信的に環境運動を推し進めていくやり方はいかにもスマートでないと思っていたからです。

 ところが、「なぜ?」が高じてせっけん・洗剤の勉強を始めると状況は一変しました。今まで漠然としていたせっけんと合成洗剤の違いが明らかになり、固形や粉ならせっけんで液体なら合成洗剤という判断は根拠のない思い込みであったこと、せっけんや洗剤は流してしまったらおしまいでなく、自然界全体に大きな影響をもたらすものであることなどが見えてきました。
 何よりも危機感を感じたのは、医学博士 坂下栄先生が行った動物を使った洗剤の実験の結果でした。合成シャンプーを背中に塗られ、真皮ごと皮膚が剥げ落ちたマウス。(中には内臓から出血して死ぬものも・・・) 合成洗剤の水溶液で眼球やえらを破壊されたメダカ。これは実験ではありますが、動物を苦しめるものであることは明白。そして、ペットたちに普通に使用されているシャンプーにも同様の危惧があり、皮膚トラブルやアトピーに悩む犬たちがたくさんいる。目にしみないシャンプーでも、眼球の細胞を侵しているかもしれない。わたしたちは安全性に疑問があるなら自ら止めることができるけど、動物たちはわたしたち飼い主が気づかない限りじっとがまんするしかない。この現実がわたしをおおきく突き動かすことになりました。そして、シンプルでナチュラルなものにこだわる生活は実は楽しく豊かであり、これらを実践し伝えていくのは正しく美しい行いである、ストイックでもなければ狂信的でもないんだ!と思うようになったのです。

 料理研究家・小林カツ代さんの「金色の金魚」というエッセイの中に、合成洗剤の話があります。留守を預かっていたパートの方が金魚蜂の水かえをするとき、合成洗剤で洗ったボールに金魚を移したら死んでしまったという話です。合成洗剤には強い浸透性と残留性、非分解性がありますので、よく洗ったつもりのボールでも、金魚を殺すのに十分な成分が残っていたのでしょうね。
 ペットの食器を洗うのに、たいていの方は市販の食器洗い用合成洗剤を使っていらっしゃるでしょう。最近の食器洗い洗剤は、水切れをよくするために浸透力を強化しているといいます。水は表面張力で水滴をつくりますが、浸透力をアップさせれば表面張力が弱まって水滴をつくらない、だから水切れがよいように感じるそうです。犬やネコは、食事のときお皿を最後まで舐めつくしますね。食器表面に強く浸透して残留する洗剤で洗った食器でごはんを食べ、そのお皿を毎日舐め続けているのかと思うと心配になります。我が家ではワンコの食器洗いもせっけん。もしせっけんが食器に残っていたとしても、胃の中の酸で中和され、脂肪と塩になって代謝されます。
 洗濯用のコンパクト洗剤に含まれる合成界面活性剤(ABS)も、環境を著しく汚すとして特定化学物質排出量把握管理促進法(PRTR法)の指定物質になっていますし、これらの製品に含まれる蛍光増白剤などもすこぶる分解性の悪い物質。ワンコの服やクッションカバーなどの洗濯もぜひせっけんにしたいですね。我々人間やペットに使った洗浄剤が、その先で小さな生き物たちの暮らしを脅かすようでは本末転倒です。
 さて、せっけんは下水に流れるとどうなるのか。せっけんは大量の水で薄まるとすぐに界面活性力を失います。水中のカルシウムなどと結合し、たとえ河川に流れ出たとしても魚介類のエサになって生分解されます。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとし、たとえせっけんでも無駄に使いすぎないにこしたことはありません。必要な量だけを上手に使っていくのがベストです。

 自分たちが心地よく健康であり、その先の動植物や自然も生き生きと回っていけるなら、こんなにいいことはありませんよね。わたしたちとともに生活する動物たち、虫や植物、土や水の中にいる生き物たちのためにも、「洗う」という行為をちょっと考え直してみてください。大切な家族であるワンちゃんと一緒に、シンプルでナチュラルなせっけん生活を実践していきませんか?


◆我が家流せっけん活用法
我が家では仕事柄せっけんの端材やテスト用の固形せっけんがたくさん出ますので、それらを使って家事などに役立てています。重曹やクエン酸でさらにバリエーションが広がります。ここにほんの一部をご紹介!

◆キッチン◆
せっけんの端材をせっけん箱にぎゅっと詰め、スポンジで擦り取って食器洗いに使っています。ワンコの食器もこれで洗っています。せっけん端材カップ1、同量の水、重曹大匙1程度を熱してよくかき混ぜてできたペーストを容器に入れて同じように使うのもGOOD。コンロまわりの油ヨゴレには重曹をふりかけ、お湯でどろどろに溶かしたせっけんをたらしてからふき取るとピカピカになります。換気扇のファンにもいいですよ。

◆洗濯◆
通常は市販の粉せっけんを使っていますが、小物のみ自作の固形せっけんを利用。特に、ワイシャツの襟元などは固形せっけんでこすってから洗濯機に入れるといいですよ。手作りせっけんは軟らかめだから衿や袖口をこするのにはちょうどいいです。すすぎの水にユーカリやミントなどを少量滴下すると、抗菌・消臭、爽やかな香りがプラスされます。

◆バスタブ◆
たいてい洗濯用の粉せっけんで洗っていますが、◆キッチン◆でご紹介した重曹入りのせっけんペーストもいいですよ。お風呂専用洗剤の必要性はまったく感じません。

◆家具、プラスチック製品のヨゴレ◆
手垢のついた家具やプラスチックの家電製品も、固形せっけんのカドで軽くこすります。固く絞った雑巾で拭けば、すっきりきれいになります。
※樹脂加工の家具には○ですが、白木、木地を残した塗装の家具は×です。



「わたしはこんな使い方をしています」という方、ぜひお知らせください。シンプルでナチュラルでヘルシーでエコな生活の和を広げていこうではありませんか!
                 info@pb-dogsoap.com
 


合成洗剤
恐怖の生体実験
坂下栄
メタモル出版
愛しのチー公へ
生きものたちとの一期一会
小林カツ代
筑摩書房
表紙をめくると飛び込んでくる、合成洗剤で皮膚障害を起こしたマウス(実験)の写真。タイトルがいかにも怖いですが、実験という客観的な過程を経て書かれた研究書です。わたしたちのために検体となってくれた動物たちに心から感謝と哀悼の意を捧げたいと思います。 「金色の金魚」が収載されている心に残る動物エッセイ。料理研究家として有名なあの小林カツ代さんが、こんなにも動物大好きな方だったなんて!カツ代さんと一緒にホッと和んだり、憤然と怒ったり、涙を流したりしながら読みました。カツ代さんの感性の素晴らしさも見習いたいです。


今回のコラムはいかがでしたか?感想をお待ちしております。
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