せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
感じたこと、学んだことなどを綴りました。
お役立ち情報とともにお届けします。

 
わたしのせっけん作り創成期
~油脂編~
2006/10/25


 デジカメ写真のフォルダに、せっけん作りを始めた頃のなつかしい写真が残されていました。せっけんは天然の動植物油脂を使って作る、でも使う油脂によってできるせっけんの使い心地はさまざま。それを確かめたくて、いろいろなオイルのせっけんを作っては自分の髪・体・顔を実験台に洗っていました。色や硬さ、トレースまでの時間も油脂ごとに違っていて、バッチを重ねるごとに新しい発見が!がしかし、中には継続使用に耐えられない使い心地のせっけんも・・・。このたびフォルダから発見されたのは、それらの実験写真の一部です。

ココナッツ油100%せっけん
お皿の中身がココナッツ油、できたせっけんも原料と同じ純白。
トレース早い。
とても硬くて、カットしようとするとバリバリ割れる。

太白ごま油100%せっけん
ビーカーの中は原料油。
前田京子さんの本では薄いピンク色と紹介されているが、実際作ってみると淡ーいクリーム色。
やわらかくて溶け崩れやすい。
マカダミアナッツ油100%せっけん
原料油は黄金色だが、アルカリ水溶液を入れたとたん紫がかったピンク色に。
やわらかくてねっとりしている。

●上段左から
ピュアオリーブ油100%せっけん

オフホワイトのせっけんに変身!噂どおり、泡立ち控えめで溶け崩れやすい。しかし肌あたりはすこぶるよい。

ラベンダーのマルセイユせっけん
精製水の代わりにラベンダーハーブティーを使用。

モラセス(糖みつ)のマルセイユせっけん
髪がしっとりまとまりやすくなるというモラセスを使用。

ひまし油100%せっけん
硬いせっけんだが、使い始めると水を含んで溶けやすい。単独では使えない。

●下段左から
米ぬかせっけん

マルセイユせっけんのレシピでオリーブ油をこめ油に代えて作った。玄米を精米してとった米ぬかをテクスチャーとして使用。

マルセイユせっけん
前田京子さんのレシピ。オプション無添加。オリーブせっけんより泡立ちはよいが、溶けやすさはあいかわらず。すぐに手で握れるほどやわらかくなってしまう。


 わたしのせっけん第1作目はマルセイユせっけん。オリーブ油100%せっけんから始められる方が多いと思いますが、いきなりオリーブ油、ココナッツ油、パーム油の3種類から作る
『マルセイユせっけん』からトライしたのでした。泡立ちは悪くないし、何よりもしっとりしてお肌の調子がとても良くなりました。ただし使い進むうちに軟らかくぐにゃりとしてきて、小さくなる前に解け崩れてしまうところが玉にキズ。

 
オリーブ油100%のせっけんは2作目です。トレースが出るまでの時間も熟成期間も長いのですが、黄色いオリーブ油が白いせっけんに変わるのはちょっとした感動です。白いせっけんなんて普通と思っていたけど、滑らかで楚々とした清潔感があり、何とも言えない喜びを感じたのでした。上の写真を見てください。マルセイユせっけんよりオリーブ油100%せっけんの方が白いんです。丹念に泡立てると細かくてやさしい泡が出てきます。糸を引くようなとろーり感。最初から泡立ちが少なく溶け崩れやすいということを知っていれば、特に不便を感じるほどではありません。が、しばらく使っていると泡立つことの気持ちよさが恋しくなってきます。

 早くも各油脂の特徴に興味をそそられていたわたしは、次々と100%単独油脂のせっけんを作り始めました。もちろん、犬にとってもよいせっけんを作りたいという思いが当初からありましたので、そのための実験でもありました。
 マルセイユせっけんの原料である
ココナッツ油パーム油、これらも単独で作ってみましたが、オリーブ油のような肌あたりのよさはありませんね。ココナッツ油は泡立ちのよさが特徴です。これで洗髪すると確かに大きな泡がよく立つのですが、すぐに消えてしまう泡もちの悪さが気になります。洗い流したあとが特に最悪で、指が通らないほどのぎしぎし感、とてもココナッツ油100%のせっけんで犬はシャンプーできません。皮脂もごっそりもっていかれる感じがします。皮膚刺激になりやすいといわれるラウリン酸が成分の半分ほどを占めているからなのでしょう。パーム油はなかなか泡が立ちませんが、硬くて溶けにくい特徴は実感できました。これもやっぱり単独では無理でしょう。
 両方ともトレースが早く、硬いせっけんができます。包丁でカットすると、ばりばりと砕けるかんじ。マルセイユせっけんは、3種類の油脂のメリット・デメリットをうまく利用したせっけんだということがよくわかりました。

 
グレープシード油アボカド油の使用感はオリーブ油とよく似ています。特に未精製のアボカド油はペールグリーンのきれいなせっけんができます。こめ油ごま油はオリーブ油のようなとろり感はないものの、すすぎが早くてさっぱりします。スイートアーモンド油はオリーブ油とごま油の間くらいの使用感で、さっぱりとしっとりのバランスがとれています。これらは、せっけん用ブレンド油のメインとして、また泡立ちと溶け崩れさえガマンすれば単独でも犬に使えそうです。

 作ってみてびっくりだったのは、
マカダミアナッツ油100%のせっけん。オイルにアルカリ水溶液を入れたとたんみるみるうちに“お汁粉”色に! 熟成が終わっても紫がかったピンク色。使ってみると、あまり泡立ちはよくなく、ねっとりして肌にねばりつく感じ。マカダミアナッツ油に含まれるパルミトレイン酸は人の皮脂中にも含まれる脂肪酸で、皮膚の修復と再生にかかわり、加齢とともに減少するといわれています。これが犬に対してはどう作用するか、しかしこのねばり感と泡立ちの悪さは、快適に被毛を洗えるものではないような気がする・・・。他社のマカダミアせっけんも同じような使用感でした。使うなら要ブレンドですね。ちなみにブレンドして作ったせっけんはピンクにはなりませんでした。

 
ひまし油は、リシノール酸(ヒドロキシ脂肪酸の一種)という他とはちょっと分子構造の違う脂肪酸が豊富に含まれています。水と結合しやすいので、保湿力のあるせっけんになるとのこと、洋書のせっけん本にもお肌によい印象が紹介されていたので100%で作ってみたら、これもびっくり! なんと撹拌を始めると5分とたたないうちにトレース状態に。どうしようと迷っている間にがちがちになってきたので、慌てて型にぎゅうぎゅう詰め込んで熟成させました。ものすごい硬さ、でも中の方はねっとりです。洗ってみると泡はまったく立たず、濡れたことで透明になり、とろとろと溶けていくかんじです。ココナッツ油同様、100%で使えるせっけんではありませんでした。


 こうして油脂ごとの個性を体感してみると、心地よいせっけんはバランスのよい油脂の配合が大切だということ、油脂の選択と配合で意図的に違った使用感のせっけんが作れるということが理解できました。固形せっけんというと最初に想像する一般的な白いせっけん、あの使用感が唯一ではなかったのですね。
 実験中は髪がばりばりになって「せっけんはもうやめたら」と美容師さんから言われたりもしましたが、やはり今の自分には必要な経験でした。
『人にとって心地よくないものが犬にとって心地よいといえるだろうか』と強く感じられたことも大きな収穫。
 まだまだ犬にとってよいせっけんの研究はつづきます。


 

オリーブ石けん、
マルセイユ石けんをつくる

前田京子
飛鳥新社
アロマセラピーとマッサージ
のためのキャリアオイル事典

レン・プライス 他
東京堂出版
ソーパーのバイブル『お風呂の愉しみ』のビジュアル版。この本の巻末にはせっけん作りに大切な油脂の丁寧なガイドが載っており、今でもわたしは参考にしています。前田京子さんの研究熱心さがうかがえます。 キャリアオイルとしての本ですが、かなりたくさんの油脂の組成や特徴について載っています。脂肪酸の構造など、ちょっとつっこんだ解説もされているので、石けん本にプラスαのガイドブックとしてどうぞ。


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