せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
感じたこと、学んだことなどを綴りました。
お役立ち情報とともにお届けします。

 
口から入るもの 皮膚から入るもの
2007/1/20


 今回は、犬にも人にも深く関わる健康のおはなしです。

 私が生まれた頃は高度経済成長で、画期的な加工食品や日用品、化粧品がどんどん世に出てきた時代でした。カップヌードルの新発売やマクドナルドの日本進出などは今でも覚えています。子供の頃の楽しみは駄菓子屋さんでの買い食いでしたが、今思うと毒々しい色や化学の味のお菓子をよく食べていたものです。その当時のワンコたちといえば、ほとんどが外飼いの雑種。たまに誰かのいたずらで『バカ』なんて背中に書かれた野良犬が、あたりをうろついていることもありました。動物の愛護や尊厳への関心はずーっと低かったですね。当時の犬は寿命が6歳とか7歳、カゼなんかで命を落とす子が多かったと記憶しています。でも、食べ物に関しては人間のごはんの残り(いわゆるぶっかけめし)が中心で、市販のドッグフード中心の現在に比べると自然食に近かったと思います。まぁ、塩分とかタマネギとか鶏の骨なんかについては無頓着でしたが・・・。
 そんな時代に生まれ育った私たちの世代は『早死に世代』といわれています。体に悪いものをたくさん摂取しながら成長してきたからです。インスタント食品が溢れ、素材から手作りする機会がだんだんと減ってきました。それらの出来合い食品にはもちろん、増粘剤、乳化剤、発色剤、膨張剤、凝固剤、保存料などの合成添加物が使われています。旨味といえば合成調味料、足りない栄養素はサプリメントでという食のあり方が今や普通です。

 ペットフードではさらにこれが顕著ですよね。「新鮮な肉と穀類から作られた」「総合栄養食」と銘打たれていても、成分を見てみると、とうもろこし粉に肉類(副産物、脂も含めて)、ビートパルプなどに加え、単独のビタミン・ミネラル類がずらーっと連なって表示されています。ドライフードは長期保存のために水分を極度に抑えられていますが、油分が入っている以上酸化防止剤の添加は必須です。ドライタイプより水分の多い半生タイプのほうが体にとって必要ない添加物(プロピレングリコールなど)が多くなります。栄養素としては必要量を網羅しているし、カロリーも申し分ない。原料は肉や穀類であったとしても、高温処理されて高度に加工されたフードには、原料が持っていた
細胞のちからは残っていないのではないのでしょうか。

 こうして体内に入ってきた『必要のないもの』を、体はどうやって処理するのでしょうか。食べ物は消化管を通過しながら消化酵素や胃酸により栄養素レベルにまで分解され、腸壁から吸収されて血液の流れに乗り、体のすみずみまで届けられます。その際肝臓で不要な物質が解毒され、腎臓でろ過されて尿として排泄。腸管で吸収されなかった食べ物の残りカスは便として排泄されます。口に入ってしまっても、いらないものは体外に出すしくみがあるのですね。つまり消化管は体を貫く1本の管で、厳密にいうと『体内』ではないというわけです。

 皮膚も物質を吸収します。塗り薬などは皮膚が薬用成分を吸収できるから効果を発揮するわけですし、アロマテラピーのトリートメントもそうです。精油の分子は小さいので、細胞の間を通り抜けて血管内まで到達します。もちろん皮膚は良いものばかり選択して吸収するのではなく、体にとって喜ばしくないものも吸収します。全身に塗布するものとしてシャンプーやリンスもそのひとつ。合成シャンプー・リンス、洗剤などに使われる化学物質もやはり分子が小さく、親油性で、細胞間から侵入します。体が代謝できない有害化学物質は、脂肪組織や生殖器などに留まりやすいといわれます。

 みなさんは、口から入るものと皮膚から入るもの、どちらが毒性が強いと思いますか?答えは・・・・・・皮膚から入るものです。前述のように、口から入ったものは消化や代謝の過程で不要なものを排出するしくみがありますが、皮膚から入ったものは即『体内』に侵入してしまいます。微量であっても暴露が続けば徐々に蓄積され、生理機能に影響を及ぼし始めます。今の世代に異常がなくても、次の世代に現れる可能性もあります。化学物質が生殖器に蓄積して出産のたびに子供を通して解毒するという話を聞くことがあります。母体は出産によって化学物質を排出できるけど、子はそれを受け取って生まれてしまうというのです。特に第1子が顕著で、第2子、第3子となるに従い毒性は薄まると聞きました。実際、子供さんがひどいアトピーに苦しんでいるのは自分が持っていた毒のせいだと責めているお母様もいらっしゃいます。この現象が犬たちに起こらないといえるでしょうか。

 ペットの体に対するこのような化学物質の蓄積で、わたしが怖いと推測するのは、アレルギー、繁殖異常、肝臓障害、ガンです。なぜこれらの疾患が心配されるのかは、改めて触れようと思います。残念ながらこれらの疾患と化学物質の因果関係は明確にされにくいもので、人間でもなかなか認識されていない、ましてや動物の分野での報告はなかなか聞かれません。。このことについては、一飼い主として微力ではありますが、問題提起を続けていきたいと思っています。

 最近、北海道大学に動物を対象とした毒性学教室があることを知りました。その使命は伴侶動物も含め、動物の健康を守るとしています。研究の成果を期待せずにはいられません。


消費者団体として伝統ある『日本消費者連盟』に、ペットのシャンプー・リンス及びこれらに含まれる化学物質の問題について提言させていただきました。機関紙『消費者リポート』の2月7日号に記事が掲載されます。
 

今回のオススメ本は、最近の超ベストセラー。いずれも人間を対照に書かれたものですが、動物にも十分通じるものがあります。ペット本というとテーマがどうしても決まりきったものになりがち。多様な人間の書物からいかに動物につなげて読み解くかって大事ですよね。
食品の裏側
みんな大好きな食品添加物
安部司
東洋経済新報社
経皮毒!?
皮膚からあなたの体は冒されている
竹内久米司 稲津教久
日東書院
食品添加物の元トップセールスマンが書いた、いわば内部告発の本。プリンに醤油をかけるとウニの味なんていうけど、身の回りの食品もそんなふうに違うものから合成されていたんだ・・・。それも粉を調合したり、液を注射したりして。人間の食品について書かれた本ですが、もちろんペットフードだって考え方は同じはず。 薬学博士の書いたベストセラー。有害化学物質についての入門書といってもいいと思います。わたしたちが日々あらゆる場所でいかに化学物質に暴露されているか。これも人間対象の本ですが、動物だって同じです。巻末の『日用品が毒になる―化学物質のリスト』はすぐに役立ちます。


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info@pb-dogsoap.com








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