せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
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傍聴してきました(2)
~ペットフードの安全確保に関する研究会~
2007/10/25


 前回の『中央環境審議会第20回動物愛護部会』に引き続き、8月20日、『第1回ペットフードの安全確保に関する研究会』を傍聴してきました。

 毎日のように新しい情報が入ってくる昨今、つい先日のニュースも忘れられてしまうことも珍しくありません。今年3月、中国で生産され北米に輸出されたメラミン添加のペットフードを食べた犬・猫が、多数死亡した事件。その前にも、ペットフードの大量リコールが報じられたばかり。ペット製品に関して法制度が整っていない日本では、このままメーカーや輸入業者の企業努力や、飼い主の自己責任の範疇のまますまされてしまうのだろうか・・・・・・そんなとき届いた環境省からのメール配信に、ペットフードの安全確保に関する研究会開催のお知らせがありました。この研究会は、動物の保護や愛護を管理する環境省と、家畜の飼料などを管理する農林水産省共同の開催です。

 第1回目ということで、審議開始前には報道陣が入り、狭い傍聴席も満席。委員の方は獣医さん、フードメーカー、ペットフード工業会、民間団体などから10名の専門家が集まりました。「いぬのきもち」でペット法律相談を担当しておられる渋谷寛弁護士もいらっしゃいました。

 さて、最初はペットフードの概要説明。ペットフードの市場規模は、平成17年度2500億円だそうです。そのうち、輸入が55%、国産が45%、犬に関してはオーストラリアやアメリカから、猫に関してはタイからの輸入が多いとのこと。タイと聞いて意外に思いましたが、猫缶に使われる原料は魚であることから、漁獲量の多い東南アジアから輸入することになるのだそうです。総輸入量のうち、中国からのフードは全体の約5%です。
 飼い主さんの意識は、「ペットの食べ物だから、安くて大量がいい」から、「健康で長生きしてほしいので、少しくらい高くてもいい」に変わってきています。だから、市場ではプレミアムフードが売れるようになり、次第にペット先進国の欧米で生産されたフードが求められるようになったのでしょう。昔はペットフードといえば、お米屋さんが届けるビ○ワンくらいしか見かけませんでしたが、今はずいぶん多様化したものです。
 ところが、ペットフードを規制する法律は日本にはありません。現在動物の飼料の安全性に関する法規制は、牛や鶏や水産動物など、やがては人の口に入る家畜の飼料が対象で、犬や猫、いわゆるペットの飼料は規制対象外なのです。ペットフード公正取引協議会の定める規約はありますが、その目的は適正な表示についての指針と、公正な競争の確保、消費者保護であって、ペットへの安全性を目的としたものではありません。また、ペットフード工業会が「安全なペットフードの製造に関する実施基準」を定め、各メーカーに浸透を図っていますが、法律ではないので拘束力はありません。

 このような概要の説明ののち、国レベルでペットフードに対しどうすべきかという議論に入りました。相次いだメラミン添加やリコール問題を受けて

①ペットフードの安全性に関する法規制は必要 (全委員が合意)
②しかも既存の家畜飼料に関する法律とは別に新法を発布したほうがよいだろう
③ペットフードの9割強が犬猫用であるため、対象動物はやはり犬猫
④すでにペットフードの法制度が整っているアメリカやイギリス、オーストラリアの実情を研究すべき


といった、意見が出されました。弁護士の渋谷先生から、法律家ならではのこんな意見も出されました。

「現在日本にペットフードの法規制はありませんが、悪意をもってフードに毒物を混入した場合は刑法にあたるし、動愛法にも対象となる内容はある。しかし、故意な混入であった場合は規制対象とはならない、そこが現在の法の盲点でしょう。被害者(被害動物)救済という点からも、新たな法規制は必要です。」

 全委員のうち、唯一飼い主側の代表という山崎恵子委員(ペット研究会「互」主宰)からは、同じ飼い主として大いに頷ける意見が出されました。

「ウサギやモルモットではフードの内容が異なるので、まずは犬猫から手を付けるべきでしょう。業界は、ペットフードの表示のしかたをはっきりさせ、表示の読み方の啓蒙にも努めるべきです。安全性は人間並に近づけていただきたい。また、パッケージされたフードばかりではなく、量り売りのような無表示のフードもあるので、市場の販売形態を見ながら法制度を決めていく必要性があると思います。昨今手作り食が増えたのはなぜかということも考えなければいけないでしょう。わたしはたくさんのペットを飼っていますが、もう何年も前から手作り食にしています。これからは、手間やお金がかかっても、安全なフードを自分で選択するという飼い主と、昔と変わらず安くて大量に購入できればよいと考える飼い主、消費者の二極化が進むと思われます。」

 法律は遅い、法律は変わらないというイメージが根強いですが、今回の研究会では新法成立の期待が濃厚になってきました。ペットフードの安全性を規制する初めての法律、どうか、メーカーよりも、消費者よりも、それを食べるペットたちの方向を見据えたものになってほしいと願っています。


農林水産省の
ペットフードの安全国保に関する研究会 資料

http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/syohi_anzen/pet_food/


食べさせてはいけない!
ペットフードの恐ろしい話
アン・N・マーティン
白揚社

ペットフードにご用心!

押川亮一
宝島社
ベストセラーとなった「食べさせてはいけない!」は、ひとりの飼い主がペットを失い、それがフードによるものと疑ったことから、自分で調査し、裁判を起こし、世間に訴えた記録です。アメリカ的といえるかもしれませんが、飼い主が賢くなることが大切なペットたちを守ることにもなるんですね。シャンプーの問題も同じです。 ナチュラルでプレミアムなフードであれば問題はないのか。著者はペットショップの経営者。アレルギーや、生活習慣病のような疾患が、ある時期から増えてきたのに気づき、調査・研究を始めたそうです。良いといわれているものが本当に良いのか、情報を両極面から見るための参考書になると思います。







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