1 せっけんに関するご質問

せっけんに使う油脂は絶対にブレンドしたものでないとダメですか?
ダメということはありませんが、それぞれの油脂が持つ特徴をふまえて、数種類をブレンドしたほうが使い心地のよいせっけんができます。せっけんの使い心地は、やわらかく豊かな泡立ち、ある程度固く溶け崩れしにくいこと、洗い上がりの感触のよさで決まってくると思います。そのためには、このような特徴を持った油脂をブレンドしたほうがよいのです。特に大切なのは、犬にとって刺激がなくしっとりやさしい質感です。

せっけんのタネがなかなか型入れのタイミングになりません。
油脂や水の分量が多すぎた、あるいは苛性ソーダが少なすぎたのではないでしょうか。撹拌中のタネの温度が下がりすぎてしまったのかもしれません。その場合は湯せんをしながらさらに撹拌を続けてみましょう。しっかり撹拌されているなら、とりあえず型入れして様子をみてみます。時間がかかるかもしれませんが、固まれば、あとは通常通り型出しして熟成させます。

撹拌中にせっけんタネが固まり始めました。
パーム油のような固いオイルや脂肪酸の量が多すぎたのかもしれません。米油のように、トレイスの早いオイルもあります。きちんと撹拌ができているなら、型入れしてしまいましょう。固いようならゴムベラで詰め込んでください。苛性ソーダの分量が多すぎても急激に固まり始めることがありますが、これは失敗です。

いくら保温してもせっけんが固まりません。
軟らかいオイルをたくさん使ったときは、固まるまでに時間がかかります。このようになりやすいのは、グレープシード油、小麦胚芽油などで、リノール酸、リノレン酸が多いのが特徴です。オレイン酸主体のオリーブ油やアボカド油も、多用するとけっこうトレイスが出るまで時間がかかります。根気よく保温を続けてみてください。以前、小麦胚芽油だけでせっけんを作ってみたところ、1ヵ月たっても固まらず、すっかり忘れた1年後くらいに見たら固まっていたということがありました。それでも指でちぎれるくらいの軟らかさでした。リノール酸、リノレン酸が多いオイルは酸化しやすいこともあり、せっけんに多用するには向かないオイルです。

せっけんが型からはずれません。
やわらかいオイルを多く使ったときや、過剰油脂を多く使ったものは、型出ししにくいことがあります。特に複雑なモールどなどは型出ししにくくなりますので、型出しまでの時間を長く取り、十分に乾燥させましょう。型の内側にワセリンを塗ったり、オリーブスクワランやベビーオイルをスプレーしてからタネを流し込むとよいでしょう。四角や円筒形といった単純な型なら、内側をクッキングシートで覆っておいてもOK。型出し直前に1時間ほど冷凍するといった方法もあります。このような作業がわずらわしいなら、牛乳パックやお菓子の容器など、壊してもおしくないものを型として使いましょう。(掲載のレシピの分量は、1リットルの牛乳パック1本分よりも多めです)

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保温中のせっけんが汗をかいています。
保温箱の中で生じた湿気が冷えて、せっけんの表面に水滴が生じたようです。早めにキッチンペーパーなどでそっと吸い取っておきましょう。品質には問題ありません。

保温中のせっけんに油膜が張っています。
保温中の温度が高すぎると、過剰油脂が表面浮いて油膜をつくることがあります。キッチンペーパーなどでそっと吸い取っておきましょう。品質には問題ありません。

カットしてみたら固く、中に光るものがあります。
せっけん内の光るものは未反応の苛性ソーダです。強い刺激がありますので、犬や人には絶対につかわず、手袋をして洗濯・掃除などに使いましょう。また、リバッチといって、作り直すこともできます。失敗せっけんを細かく刻み、ひたひたのお湯を入れて一晩おきます。オイル量が足りない場合は不足分を足して、時々ゆっくりかきまぜながらジェル状になるまで温めます。再び型入れして、3週間ほど乾燥させます。

出来上がったせっけんの表面に粉を吹いたような白い層があります。
白い層は、重曹とソーダ灰の混合物(セスキ炭酸ソーダ)と思われます。この部分はペーハーが9~10程度と高めですのでカットしてから使ったほうがよいでしょう。軟らかいオイルが多かったり、保温の温度が低い場合にできやすくなります。脂肪酸を加えると生じにくいようです。

保管中のせっけんがねとねとしています。
空気中の湿気を吸って、せっけんの表面がねとねとぬるぬるすることがあります。特にここでご紹介しているせっけんは、塩析を行わないグリセリンたっぷりのせっけんです。グリセリンは水分をひきつけやすいため、このようなことが起きやすいのです。風通しのよい場所で保管するよう努めてください。

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出来上がってしばらくたったせっけんに黄色いシミができていました。
せっけんの酸化のサインです。酸化は、光や高温で早まりますので、冷暗所で保管するよう努めてください。シミが生じても、問題なく使えます。できるだけ作ってから1年以内に使い切るようにしてください。

失敗したタネを捨てたいのですが・・・。
失敗したタネを捨てるのは難しいものです。なにしろけん化前のタネは、苛性ソーダの入った油なわけですから。わたしが実際にやってみて、これなら大丈夫と判断した処理方法をご紹介しますネ。まず、丈夫なビニール袋を何枚かと、古新聞、クエン酸を用意してください。重ねたビニール袋の中に細かくちぎった古新聞を入れておきます。(写真左)  タネ1kgあたり大さじ3杯程度のクエン酸を、少量の水で溶いてから失敗タネの中に入れます。よくかき混ぜてアルカリを中和してから、ビニール袋に流し込み、古新聞によく吸わせてください。写真右は新聞紙と一緒にかき混ぜたので、真っ黒になってしまいましたが、ビニール袋に注ぎ込む前によくかき混ぜておけば十分です。ためしに指を入れてみましたが、刺激は全くありませんでした。しっかりとビニール袋の口をしばって、燃えるゴミに出してください。
自治体によって捨て方に指定がある場合は、それに従ってください。
  

ココナッツ油がアレルギーを起こすと聞きましたが、大丈夫でしょうか?
ココナッツ油(ヤシ油)は以前から多くのせっけん・洗剤の原料になっている植物脂です。一部の人(犬)には、ココナッツ油にアレルギーがあるかもしれませんが、油脂に限らずどの素材も、多かれ少なかれアレルギーを起こす可能性を持っています。特に、精製されているものより未精製の自然原料のほうがアレルギーを起こしやすいといわれています。
多くの製品にココナッツ油が多く使われている点から考えても、アレルギー性について特筆すべき性質はないと思われます。ココナッツ油のデメリットとしては、皮膚への刺激性が挙げられます。これは、ココナッツ油に多く含まれるラウリン酸という脂肪酸が持つ性質です。少なめに配合することでこのデメリットを軽減できます。

初めてせっけんを使ってみましてが、よく泡立ちません。
被毛を奥までよく濡らしてください。犬の毛は、カンタンに奥の奥までは濡れないものです。表面だけの濡れでは、なかなかせっけんは泡立ちません。ヨゴレが強い、長期間シャンプーしていない、脂性の場合も泡立ちが悪くなります。そのようなときは二度洗いしてください。今までPeach Blossomのせっけんを使っていただいた方からは、泡立ちがよいというご意見を多くいただいていますが、泡立ちがよくなかったケースでは、アンダーコートが密な日本犬や、丈夫でワイルドな毛質の犬でした。いずれにしても、水をはじきやすい毛質ですので、念には念を入れて濡らしてください。

洗っている途中でせっけんがすべって落ちてしまいます。
まずはせっけんをしっかりと手でホールドできる大きさ、形にカットしましょう。波型カッターを使うのもいいですね。せっけんネットを使う方法もあります。ネットの目が粗いと、洗っているときに被毛がからまりますので、目が細かくて滑りやすい、モスリン、オーガンジーといった材質のネットがいいでしょう。排水溝用のストッキングタイプのネットも使えます。ネットを使う場合は、洗う前に十分泡立てるようにしてください。

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シャンプー中に犬が泡を舐めてしまいます。
せっけんは、胃の中に入ると胃酸で中和され、脂肪酸と塩に分かれます。ですから、1回のシャンプーで時々ペロペロやっても問題はありません。大事なのは、舐めてしまったときに体に悪いような廃油、防腐剤、香料、着色料などを使わないことです。胃酸でも中和されない合成界面活性剤もよくありません。

せっけんのアルカリ性は皮膚や毛に悪いと聞きましたが・・・。
そのような情報がたいへん多いですね。アルカリ性だから悪いというのは誤解をまねく説明です。暮らしの中では、酸もアルカリもなくてはならない性質。それにしても“せっけんはアルカリ性”という表現は乱暴すぎます!“せっけんは弱アルカリ性”というのが正しい表現です。ペーハー(水素イオン濃度)の目盛が1下がるだけで濃度は10倍に、2下がればそのまた10倍薄まります。せっけんのペーハーはpH8~9で、これは皮膚を刺激したり荒らしたりするほどの濃度ではありません。むしろ、古い角質をやわらかくし、脂ヨゴレを洗い流すのに適しているのです。合成シャンプーの中にも弱アルカリ性のものはあります。多くのペット用シャンプーの説明で、使われている界面活性剤の性質が論じられることなく、弱アルカリ性への批判が展開されているのが不思議でなりません。
毛に悪いといわれるのは、せっけんで洗うとキューティクルが広がって、毛と毛の摩擦が多くなるから。弱酸性のリンスで流せば瞬時に引き締まりますし、材料の選択・配合・製造方法を工夫することで、リンスの必要がないくらいのせっけんを作ることもできます。

市販のペットシャンプーには目にしみないものがありますが、せっけんはすごくしみますよね。
有名なせっけん・合成洗剤の研究者 坂下栄先生の著書「合成洗剤 恐怖の生体実験」に、メダカの一種タップミノーで行った実験写真があります。せっけんシャンプーの水溶液と合成シャンプーの水溶液に、それぞれタップミノーを放して10分後、せっけんシャンプーではタップミノーの眼球表面はきれいなままですが、合成シャンプーではシワが寄って、眼球が破壊されていく過程を示していました。エラも同様に破壊されかけていたと報告されています。
せっけんは弱アルカリ性。中性や弱酸性のシャンプーは、合成界面活性剤からしか作れません。目にしみるのなら、顔だけ別に洗うとか、目に入らないように気をつけてあげればいいだけのことです。
あなたは愛犬のために、しみるけど眼球への影響がないシャンプーを選びますか?それとも眼球に悪影響があるけどしみないシャンプーを選びますか?

ペット用せっけんシャンプーが今まで売られていなかったのはなぜですか?
前田京子さんや小幡有樹子さんら自然派ソーパーさんの著書が世に出るまで、市場ではせっけんに対する意識が薄かったと思います。わたしたちが想像するのは、お中元やお歳暮でもらう大量生産された白いせっけん。これらのせっけんは、中和法という製法で、油脂から分離された脂肪酸と苛性ソーダから短時間に作られ、合成の防腐剤や香料、着色料などが加えられています。主成分はヤシ油(ココナッツ油)のものが多く、泡立ちがいいのですが、洗い上がりのパサパサする、お肌にとってきついせっけんです。前田京子さんも著書の中で、市販のせっけんの使い心地がよくないのは、主原料がヤシ油であることにひとつの原因があるのではないかと推測されています。そんなせっけんで、かわいいうちの犬のフワフワな体を洗ったらどうなるでしょうか。獣医さんだって、せっけんで犬を洗ってはいけないと言っていたくらいです。しかし、先輩ソーパーさんや良心的な企業の努力で、すこぶるよい使い心地のせっけんができると知れ渡ってきました。ならば環境にもやさしいせっけんを使ったほうがいいじゃないか・・・という流れでようやくペット用せっけんシャンプーが見られるようになった・・・というのがわたしの推察です。

手作りするメリットは何ですか?
まずは、素材から自分で納得したものを選べること。体に必要のないもの、アレルギーを起こすものは、最初から入れないですむこと。使用感や洗浄力を意図的にコントロールできること。作るという楽しみを得られること。そして何より、大好きなワンコのために愛情込めたものができること・・・です。

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21 こちらのレシピのせっけんにはどんな型が適当でしょうか?
アルミの型は腐食してしまうので向きません。プラスチック、ステンレス、シリコン、耐油耐水処理した紙製のものが使えます。豆腐やプリンや牛乳のパック、プリングルスの入れ物など、廃物でも十分です。ただし、作ったタネが納まる分を用意しておきましょう。
特に牛乳パックをご愛用の方、こちらでご紹介しておりますレシピ(バッチサイズ800g)では、1kgちょっとのせっけんタネが出来上がります。1リットルの牛乳パック1本分よりも多くなりますので、もう1本、または他の容器も併せてご用意ください。

もしどうしても牛乳パック1本分だけ作りたいという方は、通常の分量の7割がたで作ってみてください。
計算すると、次のようになります。

     
オリーブ油  336g
     ココナッツ油  56g
     パーム油   112g
     ひまし油    56g
     ホホバ油(スーパーファット) 18g

     苛性ソーダ  64g
     精製水   168g

     エッセンシャルオイル  40~80滴程度
     ハーブ・クレイなど  お好みで1~3g程度


ステンレス製の寒天型に、230×135×50ミリくらいのものが市販されています。これは800gバッチ程度にほぼぴったりです。頑丈で取り出しやすいつくりになっており、なかにはフタ付きのものもありますので、せっけん作りリピーターの方にはオススメです。内側をクッキングシートで覆っておくと、型出しはさらにスムーズになります。


22 ここで紹介されている犬用せっけんは猫にも使えますか?
  これらのせっけんは犬を対象として紹介するもので、猫に対してはテスト等しておりません。しかし、市販の合成界面活性剤によるシャンプーが猫によいかというと、やはり、浸透性やたんぱく変性などの問題(詳しくはせっけんの化学と合成界面活性剤)はあるわけで、その点ではせっけんのほうが猫にとってもやさしい洗浄剤だと思います。
猫にせっけんを使ってみようと思っている方は、せっけん素地以外に添加されている成分にご注意ください。犬と猫では代謝機構に違いがあります。特に精油の使用では事故例が報告されています。FAQの『せっけんに関して⑨』をご参照ください。猫には無香料・無添加の純せっけんをおすすめします。また、犬よりも猫のほうがさらに皮膚が薄いため、よりやさしく低刺激なせっけん選びをしなければならないと思います。




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